大阪在住で、福祉防災が専門の湯井恵美子さんが10月17日と28日に佐久穂町を訪れ、私も同行した。
17日は、佐久穂町のボランティアセンター、福祉避難所となった老健、被災住民の方々、いまなお避難所で生活される方々からお話を伺った。
湯井さんの被災者や自治体へのアドバイス内容はもちろんだが、被災者と被災自治体に寄り添う姿勢、住民や職員との話し方は大変参考になった。
被災された方も被災自治体も、人手や物資など、「もっともっとお願いしていいんですよ」ということを丁寧に伝えてくださった。
28日、湯井さんは、兵庫県立大学大学院の先生方を連れて佐久穂町に来てくださった。
兵庫県立大学大学院には減災復興研究科があり、科長の室崎益輝さんは日本災害復興学会で特別顧問もされている方。准教授の澤田雅浩さんは、中越地震など、山間部復興のエキスパート。
17日から10日経った被災現場は、道路や橋、護岸の復旧工事が進む一方で、傾いていた家がさらに傾いたように見えるなど、予断を許さない状況だった。
町長は休む間もなく大変な状況は変わらずだったが、他の自治体職員の応援が入り、また、現場に自衛隊の災対部隊も入って、人的な後方支援が見えるようになってきていた。
千曲川のほんのごく一部は、国が県に代わって護岸工事を実施しているが、佐久穂町では、抜井(ぬくい)川や余地川など、千曲川以外の川で甚大な被害が出ている。
先生方によると、権限代行で国が工事をしてくれる時は、地元自治体と県、国とで調整会議を早急に立ち上げて、被災地を縦割りにするのではなく網羅的に復興を進めることが良いとのこと。
先生方によると、ほとんどの災害で、被災者や自治体は現場復興を望むという。しかし、1、2年経っていろいろな選択肢が考えられるようになると、将来を見据えた考えができるようになるという。
例えば、ハザードマップ上危険とされる場所は、現状復旧で良いのか。拡幅工事をして、被災者が移転できるようにするなど、改良復旧を念頭に、被害対策事業を活用するべきではないか。この辺りの知恵出しや発信は、やはり地元が頑張らなければいけない。地元が提案をしなければ、国や県は現状復旧に頭がいってしまうと先生方は話してくれた。
あと、浸水等でダメになってしまった田んぼを見て、なりわいとして農業をしていなくても、自給自足として米作りをしていたのであれば、田んぼがダメなままだと、これまで不要だった食費(米代)が発生し、被災生活のさらなる負担になる。暮らしの本当の復興には時間がかかるが、せめて来春、暖かくなる頃までに田畑が復旧すると、農業とともに暮らしてきた人にとっては、気持ちがより前向きになれるのではないかとのこと。
また、山間部の住宅は、面積の広い、昔からのしっかりした住宅が多いので、再建費用が多くかかるという話もあった。
台風19号は、全国的に大きな被害をもたらしたものの、山間部の様に報道されていないところがある。また、山間部でも、例えば佐久穂町は、町の中心部は大丈夫だが奥の集落が大変など、町の中でも被害に大きな違いがある。このように、被害がバラけた状態だと、被災者は長くかかる復旧と向き合い続けなければならないが、被害のなかったところは、被害や台風のことが割合早く過去の話となってしまう。
被害にあったかあわなかったか、被害にあってもその重い軽いによって、人々の気持ちに、知らず知らずのうちに大きな溝ができてしまうという。被災者の復旧復興が遅れてしまう、取り残されてしまうことのないように、地域全体、自治体全体、県や国全体で、復旧復興ムードを高め続け、心を一つにして被災と向き合うことが大切という話が一番響いた。
あと、議会、議員(国会議員や地方議員)は災害対策の法律で定められた役割があるわけではなく、国や自治体は緊急対策を迅速、即断でやるため、議会、議員が宙ぶらりんというか、普段なら議会にはかることもはかっている暇がないので飛ばされたような存在になってしまい、そうした中で議員がどう動くのかは、非常に大切との話もいただいた。
政治家になって地元がこんなに大きな被災をしたことはなく、12日、自宅アパートでじっと避難している時から、明日からどう活動するべきか、どう活動するべきかということを考えながらここまできたが、情報の収集と発信、地元や県と、国などとのつなぎ役になることが一番の役割だと思って、被災地と東京を行ったり来たりしている。
朝夕の冷えも本格的になってきた。冬に備え少しでも復旧復興を進めたい。