行動なくして
実現なし
001.想い

特定秘密チェック 情報監視審査会 報告書提出にあたって

 

情報監視審査会 国会報告政府の特定秘密の指定状況などをチェックする、衆参それぞれの情報監視審査会が、きのう今年度の活動報告書を国会に提出。私は衆の審査会のメンバー。昨日今日の新聞やテレビをチェックしたが、 法律案審議の時や、法律施行時に比べると記事やニュースが少ない。報告書の内容をさらに読み込み、追加の取材によって、もっと掘り下げた報道は可能だと思うので、引き続きの報道に期待したい。法律制定時に、チェックが必要だと幾度も報じたマスコミに、自らもその役割を果たし続けることを期待したい。

 

これまで、情報監視審査会の活動について、私は発信を控えてきたが、報告書を公表したことによって、私が審査会委員として守秘義務を負う部分とそうでない部分がはっきりしたので、この審査会報告について少々述べてみたい。

 

 読売の今朝の朝刊には「政府、国会とも手探りの状態であることが浮き彫りになった」とあるが、それはその通り。手探りの中、私としては力を尽くしたが、特定秘密の指定の適否を判断するという到達点に達しなかったことは、審査会として期待された結果を出せたとは言えないと言わざるをえない。

 

また、読売は衆議院の報告書の「今後の政府の対応では勧告の対象とすることもありうる」という部分を引用。衆参とも、審査会が有する政府への勧告権はこの1年間発動しなかったが、 衆議院では、審査会の審議の中で、政府がこちらの要望に真摯に対応することも何度もあったので、今後のさらなる真摯な対応を期待し、勧告にしなかったというのが、私の思い。

 

毎日新聞朝刊は、「衆議院の報告書は審査会の質疑応答の断片を記した。そこからは情報提供にかたくなな省庁側の姿勢が浮かぶ」と書いている。我々が、主な質疑を公開したのは、情報監視審査会で一体どういうやりとりが行われているか、できるだけ広く国民に知らせるためであり、政府が公にしていない情報は割愛している。このため、省庁が非協力にみえるかもしれないが、 報告書の記載以上に、政府が協力的に説明をしてくれた議論もあったし、報告書の文字通り、非協力的だった議論もあったと付言しておきたい。

 

毎日の記事では、政府内の特定秘密チェック機関である 「独立公文書管理監が昨年末に公表した報告書は、内容の薄さが際立っている」と書いているが、私も同じ思い。国会の情報監視審査会よりも、人も時間もかけた調査をしたはずなのに、独立公文書監の報告書からは、我々の報告書のような、問題意識、政府に対する意見というものが伝わってこない。その原因は何なのか。今後の国会審議で明らかにしていきたい。

 

毎日新聞によると、アメリカ上院の、対外情報機関の監視組織は2年間に112回開催、イギリスも会期中は週一回の定期開催であり、衆議院の9回、参議院の15回は少ないと指摘している。 回数の少なさは私も課題の一つと感じているが、8人のメンバーが揃う日程の確保ができなかったというのが正直なところ。予算委員会の要職にあるメンバーもいれば、私も、審査会の他、法務委員会、農林水産委員会など複数の委員会を持つ。1人の国会議員が複数の委員会を掛け持ちする状態では、差し替えのきかない情報監視審査会の日程に影響が出ることが避けられない。情報監視審査会の開催回数を増やし、審議時間を十分に確保するためには、審査会メンバーが、他の委員会から外れるなどの、超党派の取り決めが、今後、必要かもしれない。

 

東京新聞の記事を見ると、「公文書管理の問題に詳しい長野県短大の瀬畑源教授は『政府は特定秘密の運用をッチェックできるだけの十分な情報を審査会にしていない。 制度の限界があることは確かだが、審査会側も勧告権限を使うなどして、非協力的な態度を改めさせるよう努力するべきだ』と指摘する」とあるが、ここは先ほども書いたが、まだ模索中、 どうしたら、こちらの望む情報を政府が遅滞なく出すような関係を築けるか、審査会として努力を続けている最中だ。

 

分厚い報道をしている朝日新聞は、社説タイトルが「追認機関ではいけない」と厳しい。朝日の社説には「監視の名に値する内容とはほど遠かった」「国会の責任が果たせたとは到底言えない」「勧告になぜ踏み込まなかったのか」と厳しい言葉が続く。勧告を見送った理由は先ほど述べたが、追認機関になってはいけないという思いは、強く持っている。朝日新聞の一面は、衆院の報告書で公表された審査会の主な質疑を重点的に1面に取り上げ、審議内容を想起しやすい紙面になっている。

 

朝日の有識者インタビューも、1人は「何が指定されたのかわからないということがわかったのが唯一の収穫」と厳しいが、もう1人は、衆院の審査会が、文書の廃棄を防ぐ提案をしたことなどから「初年度の活動としては一定の評価ができる」とコメントしていて、今後の活動に、さらに意を強くした。
最後は、写真入りで厚い報道をしている、私の地元、信濃毎日新聞。社説は、タイトルが「政府への不信がにじむ」。文中にも「報告書の指摘からは、政府主導の運用体制に対する審査会の苛立ちが見て取れる」と、私の思いを代弁してくれている記述もある。信濃毎日新聞の有識者コメントは、「実質的な成果は少ない」「衆議院が、非公開だった審議の詳細な経過を明らかにしたことは一定の評価ができる」とあるが、実質的な成果が少ない点は、私も同じ思い。

 

最後に私の、年次活動の感想を述べると、時間の確保と、自分の専門能力不足が大きな壁だった。時間については準備に妥協せず、審議でも与党の配慮により、多くの発言の機会をいただいたが、絶対的に不足、不完全燃焼の審議もあった。不完全燃焼の審議部分については、報告書に今後の課題として掲載してあるので、不完全燃焼のまま終わらせず、引き続き審議を重ねていくことにしている。また、専門性については、相談相手すら限定される中、一番の壁であった。しかし、守秘義務の範囲で、できる限りの助けを借り、審議前の分析に多くの時間をかけたことで、問題点の絞り込みなど、一定の役割を果たすことができた。

 

信濃毎日の記事にあった「実質的な成果が少ない」ことは、どう抗っても否定しがたい事実である。報告書に残された課題を明記したのは、課題を放置せず、あくまで実質的な成果を求める意思表示であり、来年度のチェック活動にも全力を尽くしたい。