行動なくして
実現なし
001.想い

食中毒とは

食中毒とは何か。

 

食事が原因であれば食中毒。レストランやホテルなどで、従業員が風邪のような感染症を持っていて、それが食事を通じて広まっても一般的には食中毒と解されている気がする。これが、お客さんが感染症を持っていて、それがなんらかの理由でレストランやホテルに広がったら感染症か。それともこれも食中毒か。レストランやホテルがお客さんの体調に責任を負うことは言うまでもないが、その責任はどこまであるのか。法律(食品衛生法)や行政の定義付けによって責任の所在が決まっているのだろうが、その定義に問題がないとかあるとか言い切れるものになっているのだろうか。きょうはそんなことを調べて話を聞いて回ってきた。

 

上山田温泉で、昔ノロウイルス発症によって営業を自粛し、営業停止処分を受けた人に話をきいた。当時はノロウイルスという名前すらほとんど知られていなかったため、旅館の社長はとりあえず、発症者や発症者と同時期に宿泊した人をお詫びして回ったという。その後ノロウイルスについて勉強していくうちに、旅館の食事が原因ではなかったのではないかと思い始めたという。

 

ノロウイルスは特定の食材では検出されることはあるが、熱に弱いので、加熱調理した料理に存在する事は考えにくい。しかし、空気感染や接触感染でも広がるから、レストランや旅館にとっては大変対処の難しい問題だ。現在は、ノロウイルスも食中毒の範疇に入り、患者が大量に出た場合は保健所に通報することになっている。感染源を特定することは容易ではないが、患者が急激に増えた時間帯を分析したり、レストランや旅館ホテルの従業員が感染するなど複数の要因が重なった場合、食中毒と断定されて行政処分されることが多いという。

 

ノロウイルス発症を経験した業者は「普段から食事には十分気をつけているし、従業員の衛生管理も注意している。それでも原因が事業者側にあるとハッキリしていれば処分は受けるが、せめて調査に時間をかけて、白黒がハッキリしてから結論を出して欲しい」と思う人が多いようだ。ノロウイルスを出した業者が感染源が曖昧なまま食中毒と断定されることが続いてきた背景には、経験のある業者と無い業者で理解度が全く異なり、業界として強い危機感を共有できていないこともあるようだ。

 

ノロウイルスのように、食中毒が“疑われる”患者が発生した場合、発生から原因が特定されるまで矢面に立たされるのはレストランや旅館ホテルだ。とくに、高齢者をはじめ体力のない人が入所している施設は大変だ。ノロウイルスそのものは生命の危機に直結しないようだが、体力が弱いと、下痢や嘔吐、脱水症状などが体に深刻な影響を与える。

 

今年の夏、菅平高原で740人の発症者を出した食中毒があったと報道された。菅平と関係ない業者の弁当が原因だと報道された。(しかしその後、この弁当が原因だったことが科学的に確定したという報道は、私の知る範囲ではまだ確認していない)このとき、弁当が原因ではないかと早い段階で地元でも分かったようだが、弁当と関係のない旅館ホテルでは、その後も夕飯を敬遠する客が出るなどしたという。宿泊している客の体調に旅館やホテルが責任を負うのは当然だから、矢面にたつ旅館やホテルも全力で対応する。しかし、大きなニュースになれば風評被害も心配される。「せめて、原因の白黒だけははっきりつけてほしい。きちんと調べてほしい」というのが、旅館ホテル、弁当業者など、飲食に携わる人の全ての思いではないか。

 

ラクビーの聖地・菅平高原のホテル・旅館は他の地域のホテル旅館と違って、学体など団体客が圧倒的に多い。ラクビーに限らないがスポーツ選手の団体は食事はもちろんだが、起床から練習、入浴、就寝と、チームの1人1人が同じ時間帯に同じ行動をする。トイレだって多くの人が集中して混雑する。このため空気感染、接触感染するノロウイルスは、食事以外でも感染する可能性が高いし、極端なことをいえば、グラウンドで感染することも考えられる。

 

食品衛生法上、食中毒がどのように定義され、ノロウイルスが単に食事の問題と片付けられるのかどうか、法律と実態の検証をしていく必要がまずある。

 

また上田市は、2020東京オリンピックやラクビーのワールドカップ招致関係で菅平をさらに全国、世界に売り込んでいこうとしている。そうであるならば、食中毒やノロウイルスの予防はもちろんだが、疑わしき事例が発症した時に拡大を防ぐことや、原因を科学的にきちんと特定するなど、感染症や食中毒対策も最先端となるよう、上田市自らが行政をあげて取り組むことは非常に大きな意義がある。なによりも、スポーツのチームや選手・関係者なら、どこの国のどの年代のいかなる競技の選手であろうと、皆、環境や衛生面、何かあったときの対応にたいする関心は非常に高い。トップチームになればなるほどその関心は高まり、スポーツの聖地の自治体がどのような取り組みをしているか注視しているはずだ。

 

先日、菅平の知り合い数人と夕飯が一緒になったときに、あるホテル旅館関係者が「宿泊している子どもが熱でも出したら病院に連れて行かないといけないから今夜は飲まない」と言っていた。旅館ホテル関係者なら当たり前のことなのだろうが、私も含めて回りは飲んでいたので、その時の言葉を今も覚えている。

 

菅平高原をスポーツの聖地として、さらに全国に世界に売り出すには、菅平の恵まれた環境と地元の人たちの頑張りに加え、行政も全国一、世界一の助言や指導を目指して欲しい。