久しぶりの「選挙を考える」。今回は『握手』です。
握手は、選挙で定番の光景のひとつです 。
私が記者時代に選挙を取材をしたときも、
候補者が有権者と握手をするところはカメラマンに撮影してもらいました。
私は、記者として候補者本人に
有権者と握手をするよう依頼したことはありませんでしたが、
参院選では、私を取材をしてくれた記者やカメラマンの方から
有権者と握手をするよう依頼されることが何回かありました。
しかし私は、選挙で初めて会った人と握手をすること、
特に、あまり関心がなさそうな人の足をとめて握手をすることに最初は抵抗感がありました。
もともと私は握手というものは、友人や親戚などの親しい関係を除いた社会上のコミニケーションの場合、
目上の人が年下の人に親しみを表したり、激励のような気持ちを込めてするものだと思っていました。
記者時代に取材先から唐突に握手を求められたことは、
ある特定の職業の人をのぞいてほとんどありませんでした。
ある特定の職業とは、やはり政治家です。
取材相手に握手をされることもしばらくの間、相当抵抗感がありました。
それは、取材先とは、時には厳しい質疑をしたり、立場を異にするケースがあるからです。
先日、東京に帰り、友人と「握手」の話をしたのですが、
友人は「握手で票を取る姿勢がおかしい!
政策など中身で判断してもらえるような選挙をしないと、
使えない政治家しか当選しない」といわれました。
選挙で候補者から握手をされた有権者の方は、単なる握手だと考えてはいけません。
候補者は票を取るため、有権者との距離を縮めるために、とにかく握手をします。
「握手の数だけ票が増える」、
「有権者が手を振ってくれるだけでは票になるかどうかわからないが、
握手をすれば票につながる」というのが選挙業界の常識です。
私は最初、自分から有権者に握手を求めることができず
遊説に同行してくれた人たちから何度も「握手!握手!」と言われました。
しかし、参院選で感じたのですが、
街頭演説を終わった後に握手に応じてくれる人の多くは、すでに私を応援してくれる人でした。
「組織がない」、「無党派を取り込む戦略」と報道され続けた私でも、
通りすがりの人との自然な握手が多くなったのは
選挙戦の後半、つまり有権者の選挙への関心が高まる時期に入ってからでした。
組織で選挙をやっていると、街頭演説に動員をかけるので、序盤戦でも候補者が握手をする人はたくさんいます。
逆に、そうした支援者を除くと、握手してくれる人はかなり少ないのが現状です。
ですからメディアの人、特にカメラマンの方は
候補者が有権者と握手をする一瞬を見逃さないように、
そして、選挙慣れした陣営関係者との握手ではなく
できるだけ通りすがりの人と自然に握手する場面が訪れる時を待って眼を光らせています。
握手は人と直接ふれあうので、コミニケーションの手段の中でも
相手に親しみを表すものだと思います。
握手は何度もされると慣れてきて
本当に親しみが出てくるから不思議です。
しまいにはこっちからその人に握手を求めるようにもなります。
私は「選挙で握手をしない!」と宣言するつもりはありません。
しかし、握手をされた人が唐突に感じるような強引な握手はこれからもする気はありません。
有権者の皆さんも、ただやみくもに握手をしてくる候補者や、
握手だけして相手の目も見ないでさっと立ち去るような候補者は要注意です。
「選挙を考える」、次回は選挙戦中の『情勢分析報道』について書きます。