行動なくして
実現なし
001.想い

夏目忠雄 「愚公山を移す」

1冊の本が送られてきた。

著者は夏目忠雄氏。

長野市長と参議院議員をつとめた信州の政治家である。

 

昭和56年の参議院本会議では、

1兆4000億円の増税を組み込んだ予算案採決で、

与党議員でただ1人、反対票を投じたという。

その理由は

「肥大化した財政にメスをいれない

増税先行予算は承服できないから」だったという。

 

また、三木内閣が財政危機で

新年度予算編成に苦労していたときに

夏目氏は

「予算が国民の支持を得るためには、

まず政府が自らを律するとともに、

国民の政治意識を高めることである。

そのためには、

市町村や地域住民に自治体行政に関心を持たせ、

これに参加させる。

具体的には、国の補助金を、使用目的を明示して

一括地方自治体に案分すれば、

地方自治体は原則として各省へ陳情する必要がなくなる。

自己の財源がハッキリしているから

住民と相談して責任ある選択ができる。

つまり、分権による地方自治体の充実であり

政府が自らを律して『小さな政府』となる、

当時としてはまことに大胆な提案」だったという。

 

夏目氏の考えは今の政治にも通じるとしみじみ思う。

消費増税を先行させる今の政治は、

現行の既得権を守ろうとしているにすぎない。

財政にメスをいれる、つまり税金のムダをなくさなければ

増税に見合うサービスを国民に提供できない。

分権社会の実現も、当時は「大胆な」提案だったかもしれないが、

今はもう、本気で進めていかなくてはいけない時代に入っている。

 

夏目氏は、「愚公山を移す(ぐこうやまをうつす)」という

中国の古詩が好きだったようだ。

「愚公山を移す」は『列子』に出てくるもので、

「怠らず努力すれば、必ず達成できるものである」というたとえである。

昔、中国の愚公という老人の家の前に二つの大山があり、出入りに不便だった。

そこで、家族とともに山をほかへ動かそうと、土を運びはじめた。

人々はその愚かさを嘲笑したが、

愚公は子孫がその行いを引き継げば山を移動させるだろうと答えた。

その志に感じた天帝が、山を移動させ平らにしたという故事だ。

夏目氏は知人にあてた手紙でこの言葉を引用し

「この気持ちで国政に参画したい」と述べたという。

 

長野市長をされたのは私が生まれる前の話だし、

すでに亡くなられているから

私は夏目氏のことを直接は知らない。

しかし、先人から学ばせていただくことは非常に多い。

 

夏目氏のことを知らない私にどうしてこの本が届いたか。

それは、私が政治活動をしていることを応援し

また、大変心配してくれている先輩が

私の事をいろんな人に話してくれた結果、

偶然生まれた新しいつながりからだ。

 

先輩は私の親より遥かに年上だが

私が大学野球部で主将をしていたときに

チーム強化について

共に考え、汗を流してくれたかけがえのない人だ。

 

懸命に応援してくださる人の支えがあれば

山が1つだろうと2つだろうときっと動かせると

意を強くしている。