こんばんは。
「選挙を考える」、連載も5回目です。
きょうは選挙期間中、たびたび新聞・テレビで報道される選挙戦の情勢調査報道について考えます。
8日に投票が終わったばかりの県知事選挙を例に見てみましょう。
①「腰原氏と阿部氏が接戦 松本氏、追い上げ図る 『投票先未定4割以上』」
(信濃毎日4日朝刊より引用)
②「長野県知事選情勢調査 阿部、腰原氏横一線」
(読売2日朝刊より引用)
③「自民支援の腰原氏やや先行 長野県知事選朝日新聞情勢調査」
(朝日HP1日午後10時27分配信より引用)
④「競る阿部・腰原氏、追う松本氏 投票先『未定』依然6割」
(信濃毎日7月25日朝刊より引用)
上の①~④は、いずれも各新聞社の情勢調査報道記事の「見出し」です。
①~③は投票日に近い8月上旬に相次いで掲載されたものです。
そして④は告示日(7月22日)の直後、25日に掲載されています。
情勢調査報道を読んだ時に受ける印象は人それぞれですが、
あくまで現時点の情勢として受け止めるか、
または結果を占う・結果に影響を与えると受け止めるか、
おおざっぱにいって、この2つが考えられるのではないかと思います。
私は情勢報道に対しては、
あくまでその時々の調査結果であり信用性は低い。
しかし新聞にたいする信用や、見出しのつけ方などから
調査の信ぴょう性や規模以上に、読者に大きな影響を与えていると考えています。
今回の知事選挙は
当選した阿部さんが362903票、惜敗した腰原さんとの差はわずかに5021票でした。
得票率は阿部さんが39点85パーセント、腰原さんは39点30パーセントでその差は0点55ポイント。
投票者が200人いて、ようやくその差が1票の形になるという、ものすごい僅差です。
今回の選挙結果と有権者の関心(投票率)をどうとらえるか。
信濃毎日は投票日朝の社説で
「有権者としては、投票しがいのある選挙と言えるだろう」と書いていましたが、
投票日翌朝のコラム『斜面』と社説では、
「有権者の迷いが表れた」という文章がいずれも出てきます。
投票率が過去最低では白熱した大接戦とは言えません。
きょう10日の社説では
「政党が前面に出た選挙戦を、多くの県民は冷やかに見ているように思えた」とも書いています。
ここで、信濃毎日の4日付情勢報道の見出しをもう一度見てみましょう。
「腰原氏と阿部氏が接戦 松本氏、追い上げ図る 『投票先未定4割以上』」。
たとえばこれが
「迷う有権者『投票先未定』4割以上 腰原氏と阿部氏が接戦』」という見出しだったら
投票結果を分析した記事に合致する。
つまりその時の情勢を的確に指摘し、さらに結果も占う記事になったのではないかと思います。
「腰原さんと阿部さんが接戦で、有権者の4割以上が投票先未定」というのは、
少し考えれば阿部、腰原さん、松本さんを支持すると答えた人よりも
投票先を決めていない人の割合が最も高いことは想像がつきます。
数字が大きなものを見出しの最後にしても、
阿部さんと腰原さんの接戦を伝えることの方が大切だと言う人もいるでしょう。
しかし投票結果が出た後の記事の内容を予見させる調査が事前にできていたことが伺えるだけに
それを的確に分析して見出しに反映できたかというと、
残念ながらそうとは言えません。
また新聞業界の情勢調査報道には、
調査結果が接戦の場合は
上位者の名前を見出しの先に出して配慮する慣例があるといわれています。
信濃毎日の4日掲載の情勢調査では
接戦ながらも腰原さんがわずかに優位だったのでしょう。
このように考えてみると
情勢分析報道はその時の情勢に過ぎず
信用性は高くないことがわかっていただけると思います。
情勢調査報道はあくまでその時々の調査結果であり信用性は低い。
しかし新聞の信用や、見出しのつけ方などから
調査の信ぴょう性や規模以上に大きな影響を与えているという
私の考えをご理解いただくため、
選挙を考える5~情勢調査報道 中~に続きます。