行動なくして
実現なし
002.政策

誰のための選挙制度改革か ②

死票救済の原則から、

小選挙区落選候補の復活の決め手は、

自分の小選挙区でどれだけ善戦したかにかかっている。

 

さらに目も当てられないのは、

制度のわかりにくさを悪用して、

詐欺まがいの選挙戦が各地で行われてきたことだ。

 

有権者には

「地元から国会へ議員を送り出したい」

「1人なんて言わず、次点の候補者も復活当選させて、

地元の声を国へ届けてほしい」という人も少なくない。

 

ここからは、これまで取材などでみてきた話である。

 

ある選挙区でA候補とB候補が互角の情勢で選挙戦に入った。

小選挙区で受かるのは1人だけ。

そこでA陣営は次のような宣伝を始めた。

「B候補は比例で安泰だから、

小選挙区はAと名前を書いて欲しい。

比例でBの政党名を書いておけば大丈夫だ」と言って回った。

両方の候補に国会に行って欲しいと思った有権者の多くが

その言葉を信じた。

その結果、

本来互角の戦いをできる力をもっていたB候補は

予想外の差で敗れ、

大差がついたゆえに比例でも復活できなかった。

こんな詐欺みたいな選挙戦が公然とまかり通ってきた。

 

勝つためなら嘘もつく陣営の作戦は論外だが、

そうした詐欺がまかり通ってしまうのは

選挙制度が分かりにくいからだ。

有権者に分かりやすい選挙制度を考えるべきだ。

 

今回の選挙制度改革に話をもどそう。

様々な報道を総合すると

まず1票の格差を減らす0増5減から話が始まった。

民主党は比例で80議席を削減するはずだったが、

0増5減分を差し引いて、削減は75でいいと言い出した。

そして、一部の政党が主張する連用制に、

35を当てることにした。

結局削減は80ではなく45にとどまった。

この途中経過をみても今回の改革案が、

「現職議員のための、既成政党のための改革」になっている。

自分たちさえ良ければいいのか。

 

選挙制度は民主主義の根幹であることを肝に銘じ、

そして有権者に分かりやすい制度をつくらなければいけない。

小選挙区か比例代表かという議論は簡単に決着する議論ではないが、

現職議員や既成政党のために制度を複雑化するのではなく、

日本の民主主義のための議論をしてほしい。

 

20世紀のスペインの哲学者、オルテガの言葉。

『民主政治は、1つの取るに足りない技術的細目に健全さを左右される。

選挙制度が適切ならば何もかもうまくいく。

そうでなければ何もかもダメになる』

 

国会が、自ら選挙制度を決めることができないなら、

選挙制度改革も、

各政党が公約に明示し、国民の信を問うしかない。