行動なくして
実現なし
002.政策

地域主体の行政 将来に向けて

こんばんは。 

先週9日の朝日新聞朝刊に「地方公社の借金7.6兆円 自治体が4.4兆円保証」という記事が載った。地方自治体が出資する土地開発公社、住宅供給公社、道路公社の地方3公社のすべて(計1112公社)について朝日新聞が調べたところ、総額7億6461億円の借金を抱え、うち4兆4082億円を自治体が債務保証しているという。国の後押しもあり、各地では公社の解散が進んでいるが、財政規模の小さい自治体では借金が重荷となって解散すら出来ず、公社の借金だけが膨らみ続けるという深刻な実態だという。地方3公社の多くは全国でインフラ開発が進んでいた70年代前後に設立され、その後の公共事業の縮小や人口減少で、多くの公社が役割を終えたり、需要が予測を下回って採算割れをしている。解散後の公社の借金は債務保証分以外も含めて自治体が背負うことになり、財政規模の小さな市区町村では公社の解散が急激な財政悪化を招くとして存続させているところが目立った(asahi.comより抜粋)

記事が出た日にインターネットを通じて「長野の状況はどうか」という質問があった。少し調べたのでせっかくだから紹介したい。

長野県には、県が出資する、または県の事業にかかわる公社・外郭団体が43団体ある。市町村がかかわる団体まで調べるとかなりの数になるだろう。今回は長野県が関係する団体に絞って話をしたい。長野県のホームページ、行政改革課によると「長野県出資等外郭団体の改革の推進について」の冒頭に、以下の記載があるので引用する。

『外郭団体のあり方及び事業内容については、独立した経営体としての団体自身による不断の見直しが必要なのはもちろんですが、時代の変化に伴い、県自身が担うべき役割の見直しが求められている中で、県の行財政運営と密接な関係を有する外郭団体についても、効率的・効果的な行政サービスの実施、さらには県民益の極大化の観点から、県として、そのあり方や県の関わり方等について根本的な改革を行うことが必要となっています。』

簡単に言うと、「団体は独自採算でやってほしいし、県の役割も時代とともに変わってきている。県の財政も厳しいのでコストの削減、サービスに見直しが必要だ」ということだ。

朝日新聞が調査した土地開発公社、住宅供給公社、道路公社の3公社は当然長野県にもある。いずれも昭和40年代に県が100パーセントの出資をして設立されている。

長野県道路公社をみてみよう。県の出資金は219億円。収支の差額は平成19年度から21年度までの3年間、毎年10~14億円の赤字だ。賃借対照表をみると21年度の負債は683億円にのぼる。このうち朝日新聞が着目していてた県の債務保証は131億円だという。出資金や、高額な土地資産があるのですぐ破綻するものではないが、道路を売るわけにも行かないので、「すぐにはどうすることもできない」という言い方もできる。

道路公社としては今後、「管理する6路線7区間の有料道路を、定められた期限内に県に引き継ぐ。そのため返済計画通りに返済を続け、道路の維持改良、料金収入の確保とコストの削減に取り組む」という意向がある。県も平成38年に団体の廃止を打ち出していて、「効率的な維持管理と県出資金の返還がきちんとされるよう経営改善に取り組む」意向だという。

道路事業は、事業にかかる金額が高額だから大きな数字が並んでいるが、ほかのいくつかの団体を調べてみると、いずれも事業の縮減や将来的な廃止など、団体の先行きが暗いことをうかがわせる。43団体は名前だけをみるといずれも必要性がありそうだ。しかし長野県オリジナルの、長野県が独自に必要と判断して設立した「長野県ならではの」団体は見当たらない。県の行政改革課に問い合わせもした。行政改革課は、「長野県にある団体が長野県だけにあるのもかどうか、他の都道府県と比較していない」というものの、「ほとんどの団体が他の都道府県にも存在することは確かだ」と話していた。

朝日新聞の記事は地方公社の負債部分に焦点をあてて、その廃止が今後の自治体運営の課題だというメッセージだった。私は長野県だからこそ必要と思われる団体は事業を縮小する必要もないし、新しい団体が必要なら今からでも作ればいいと思う。しかし県の借金が1兆4000億円を越える厳しい状況では、廃止するものは廃止して力をどこに注ぐか、メリハリのある改革をしないと地域に実情にあった行政はできないと感じた。

どこの都道府県にもある団体を、どこの都道府県も同じように作った結果、出資金や補助金、場合によっては団体の負債の一部が、県の借金の要因となっているのだ。

最近、阿部知事がやろうとしている信州型事業仕分け。民主党政権が国政でやった事業仕分けの感覚で仕分けをされたらたまらないという意見が県議会や報道でされている。公社の問題や事業仕分けの問題は、「国のお勧めだからいい」とか、「他の都道府県がやっているから大丈夫だ」という安易で横並び的な考えかたではなく、地域の事情に応じた独自の姿勢で行政運営にあたることの必要性を感じさせる点で共通している。信州型事業仕分けについては、形だけで終わりにして欲しくないと強く思っているが、独自性以前にまだ中身が見えていない。

地域の実情にあった地域主体の行政。国から財源や権限の移譲は遅々として進まないが、金がないなら知恵を絞って地域の実態にあった行政運営を、今のうちから始めていくことが将来にむけて大切だと思う。