きのう、南牧村の酪農家を訪ねた。TPPに対する強い危機感は、酪農家も例外ではない。チーズにかけられている高い関税が撤廃されると、チーズを作っている北海道の酪農家が大打撃を受けると言われている。南牧村よりも規模の大きい北海道の酪農家が、チーズをあきらめ、牛乳にすべての力を投入すれば、南牧村は大きな影響を受けると言われている。この話自体は、1年前の村長選挙の時に聞いていたが、きのう改めて話を聞きにいってきた。
南牧村の酪農家は、規模が大きく、設備投資も大掛かりだ。牛乳の製品化の行程は農協が一手に引き受けており、酪農家は牛を飼って乳を搾る作業に特化して大規模化を進めてきた。仮に予想される危機的な状態になった場合、すぐに別のことを始める。対策をとるというのは難しいという。農協に製品化、販売をゆだねてきたから、独自に商品開発をすることは難しいし、独自の販路もない。1つ歯車が狂ったら大変なことになるリスクはある。
きのうは23時半まで、数人の農家と話し込んでいたが、その中の1人に
「TPPをやってどうしたいの?何のために、この国をどうしたい
日本の産業構造、食糧供給、経済成長、貿易・外交をいい方向にもっていくことを考えなければいけない。 だからこそ、TPPを進めるというのなら、徹底的に日本の主張をし
TPPは、農家にとって受け入れ難いということはわかる。 一方で製造業の中小企業が、海外とのコスト争いに勝つために、 関税撤廃にワラにもすがる思いで期待しているということも わかる。さらに言えば、TPPは農業や製造業だけの問題ではない。関税だけの問題ではない。医療の問題もある。多くの分野を巻き込んだ新しい国際的なルールを作ろうとしている。
国内では以前かなり議論されたが、その内容は、決着とは程遠いところで止まっている。最近は「近いうちに解散」やアメリカ大統領選挙の陰に隠れ、議論すらなかった。なによりも交渉の話は、伝わってこない。アメリカで自動車業界などが日本の参加に反対している程度の話が、たまに入ってくるだけだ。
国の方向性を決める大きな話だからこそ、「唐突」や「時間切れ」などではなく、「熟慮断行」が大事だ。結論を出す前に、もっと情報を取って考えなければいけない。TPPに進むにしても進まないにしても、「何のために?」、つまりビジョンを描かなくてはいけないが、そこまでの議論はまだされていない。