菅総理の退陣表明に見せかけた続投宣言は、総理自身を追い詰めることになってきた。「死んだふり続投」、「ペテン師」といった強烈な批判が噴出している。こうした流れをテレビや新聞でずっと見てきた私からみても当然だと思う。菅総理は信用を完全に失った。「震災復興のために責任を果たしたい」という言葉を、もはや信用できない。
日本はまだ非常事態が続いている。震災から3カ月になろうとしているのに10万人近い人が避難生活を続けている。原発事故も収束のメドがたっていない。水道が壊滅したままの町がある。大量のがれきは一向に片付かない。なによりも、被災地復興のビジョンと希望が見えない。こんな時に、信用できない総理が居座っているのが最大の弊害だ。
「今、総選挙をしている場合ではない」という意見は正しいと思う。避難している人たちが仮設住宅に入って落ち着いた生活を取り戻すまでは難しいだろう。菅総理の予定だと、8月いっぱいまでかかるという。原発事故も、収束するのは年内か年明けだともいわれている。しかし、そのあとは、すぐに総選挙をやるべきである。
おととしの政権交代は、有権者の危機感が高まって実現した。バブルの崩壊、リーマンショックで格差の拡大が進み、暮らしへの不安、将来への不安が有権者を突き動かした。当時の「コンクリートから人へ」というスローガンに象徴されるように有権者は、自民党に象徴される既得権をもった人から国民の手に政治を取り戻そうとした。今の世の中をみると、当時の選択は間違いだったと言ってしまいたくなるが、有権者が総選挙で国を動かしたことは、今も高く評価している。おととしと今とでは、危機の状況が異なる。被災地以外は震災前の生活に戻ったが、被災地の現状と原発事故は改善のメドがたたない。毎日報道されているからといって慣れてはいけない。報道が少なくなっているからといって忘れてはいけない。
町長が津波で亡くなった岩手県大槌町が町長選挙をやろうとしているという話を、大槌町出身の人からきいた。「町は日々復旧のために頑張っているが、目の前のことに追われて将来と希望を示すことができていない」とその人は言っていた。たくさんのがれきが残る中での選挙になるだろう。避難所から投票に行く人もいるかもしれない。それでもやらなければいけないときは、やるしかないのである。
「総選挙を今はするべきではない」というたくさんの人たちの心に、「復旧にめどがついたら総選挙しかないな」という気持ちが湧き始める気がする。菅総理の行動は有権者の心に火をつけた。復旧にめどがついてから菅総理が辞めるのでは遅い。与野党とか、当選回数なんか関係ない。志ある人国会議員は皆、国民が期待をもてるよう行動するべきだ。