被災地からもどって1週間が過ぎた。微力でもなにかできることがないかとここ数日真剣に考えている。しかし真剣に考えれば考えるほど、今の国会や政府の動向にたいする失望が深くなっていく。
菅内閣への不信任案提出をめぐる話だ。自民党の谷垣総裁が「今の政治状況を打開するため、野党の責任を果たす」と言ったのはその通りだと思う。谷垣総裁は「迫力がない」などと新聞に批判されているが、誠実さが伝わる数少ない政治家なので頑張ってほしいと思っている。ただ、まじめゆえに自民党内からの足の引っ張り合いにつぶされるのではないかと不安だ。ともかく私も、菅内閣は1日も早く退陣するべきだと思っている。
今朝の産経新聞が、不信任案提出は6月3日だと1面で報じている。しかし、勝負時が迫りつつあっても私は冷めた気持ちで最近の政治をみている。熱くなれないのは、その後の政治に期待がもてないからだ。同じ思いの人も多いと思う。誰が総理をやっても、世の中良くならないのではないかという政治不信が渦巻いている。
不信任案が成立した場合、盛んに言われている民主、自民、公明の挙国一致内閣が誕生したと仮定する。3党の中で総理になってほしいと思う政治家がいるだろうか。また、挙国一致内閣になろうと民主党政権が続こうと、鳩山前総理、小沢元代表といった人たちが再び表に出てくる可能性が高い。これも政治の後退だ。小沢氏や鳩山氏は、菅総理と代表選を戦った後からマニフェストの遵守を公言してきたが、震災後の非常時に悠長なバラマキ路線を強化されてはたまらない。それとも、権力を握るために再び思想を変えるのか。
小沢氏のことで最近「これはダメだ」と思ったのは、渡部恒三氏との合同誕生会である。被災地の産品を楽しみながら2人が仲直りしたと何度も報道された。小沢さんは岩手、渡部さんは福島が地元なのに、2人とも被災地をみていないのだろうか。民主党が復興に集中するために2人の仲直りが必要だというのなら、「復興のためにがんばろう」と堂々と握手をすればよい。合同誕生会などという古い演出、そして華やかな会場の様子を何度もテレビで見せられたら、被災者や被災者のためになにかをしようと思っている国民の気持ちは離れていくだけだ。2人が被災地を訪れたニュースもあったような気がする。被災地にはいっているはずだ。それでも合同誕生会を開いてしまうあたりが、政治感覚が社会とずれていることを如実に物語っている。
菅内閣では震災復興が遅々として進まないことはこの2ヵ月半で明らかだ。退陣を求める動きは支持したい。しかし、その先に希望が見える顔ぶれがいない。有権者は2年前、自民党に愛想を尽かして民主党政権を選択した。その民主党が自民党と変わらなかったことが明らかになり、政治の選択肢を完全に失った。そして大震災が起こってしまった。
菅内閣が退陣したらどういう政権ができるか分からないが、とにかく原発対応とがれきの撤去、仮設住宅の建設、農漁業の復興など、緊急を要することを本気でやってほしい。小さな市町村が大きな被害にどれだけ悪戦苦闘しているかよく考えてほしい。復興が本当に一段落したらすぐに解散だ。与野党に関わらず政治の信を国民に問いなおさなければ、政治への期待は生まれない。